DVD祭(鑑賞記録):「告白」

・「告白」

「私にも聞こえましたよ、大切なものが消える音が。」

告白 【DVD特別価格版】 [DVD]


こちらも同名小説の映画化。ちなみに私は原作読んでないので、ストーリーは全然知らずに観た。

いやー良かった。なんたって私は松たか子木村佳乃の大ファンなので、この二人が不気味な女教師とモンスター・ペアレントな母親を演じてるというだけで垂涎であります。あと、KYな熱血教師の岡田将生も、そのイケメンぶりばかりが注目されていますけど、こういうウザい役をやった方がリアリティがあるような気がしてしまいました。

とまぁ、キャストも良かったんですが、映画の構成が秀逸でしたね。愛娘を教え子に殺された主人公の復讐劇を観ていくこの作品、単なる善悪二項対立の復讐劇にはなっていない。「本当に誰の命も大事で貴いの?」という台詞を多用しながら進んでいくストーリーですが、本当は徹頭徹尾「命は重い」ということを伝えるために突き進んでいる物語なんだということがラストになって分かる仕組みになっている。

良かったのは、映画の中盤に挟まれる、殺した中学生やそれを取り巻く周囲の生徒たちの生育歴や家庭環境のエピソード。特に、主犯の少年が自分を捨てた母親に抱く渇望感は、「人を殺して有名になってお母さんに気付いてもらいたい」という切ない動機を観客に印象づけている。「本当はいい子」でも「根っから腐った子」でもない一人の中学生が、殺人の動機を抱くまでを描いていく。観客の「おとな」たちに、「そっか、この子にはそんな事情があったのね・・・」という共感的な気持ちを引き起こしながら。

観客はこの少年の渇望や悲しみを追体験したからこそ、ラストシーンで主人公が復讐を果たし、少年から「大事なもの」を奪った時、娘=大事なものを失った主人公の本当の痛みが分かる仕掛けになっている。冒頭で淡々と知らされる事実としての「愛娘の死」ではなく、大事なものの喪失によって世界はどんなふうに壊れるか、をより強く印象づける構成になっている。爆発のシーンの中で、少年が体験する「世界が壊れていく風景」は、娘を奪われた主人公が経験し今もその只中にいる心象風景でしょう。

もちろん、そんな事情があったって殺人を犯していいわけがないでしょ、というのが大人の常識なわけですが、語り手を次々に変えていくスピーディーな展開とミュージック・ビデオのような非現実的な映像がその常識を揺らがせていく。小説でもなく、演劇でもなく、映画でしかできない作品をみせてもらったという感想です。