最近はミュージカルも。

すっかり更新が滞っておりました。

現代演劇の中でも小劇場系しか観てなかったんですが、最近、ミュージカル好きの観劇友のおかげで、俄然ミュージカルづいてます。

(1)「美女と野獣」―記念すべき初ミュージカル。
2011年1月@四季劇場「夏」。記念すべき生ミュージカル一作目。

いやー、単純に「楽しい!」。小劇場系だけ観てきた人間としては,歌やダンスが入るミュージカルは「トレーニングされた美しさ」。盛り上がるとこではこれでもかと盛り上げてくれて、何も考えずに楽しめました。

一作目だったし昔すぎて、これぐらいしか感想書けず。や、でもミュージカル食わず嫌いな人にも、「美女と野獣」オススメです。


(2)「わが星」―前衛+小劇場+ミュージカル?
2011年4月@三鷹芸術劇場。これを(1)や(3)と同じ記事にエントリーしてよいのか迷いますが、やはりあれはミュージカルでしょう。

柴幸男の岸田賞受賞タイトル。口ロロのテーマに合わせて、星が生まれてから死ぬまでを疾走感と詩情にあふれるタッチで描き出したあまりに斬新な作品。私はこれを観て、「今までに観たことがないものを観た」という激しい衝撃に、終演後の椅子から立ち上がるのが困難だったほど。

星が生まれてから死ぬまでの物語なんだけど、それはもちろん人の一生のメタファー。誰もが一度は経験した(もしくは経験したと錯覚させられる)家族や友達のエピソードをあくまで軽く透明な層として重ねることで何でもない日常を生きながら「死」へ向かっている私たちの寂しさや哀しさを実感させる手法には脱帽。ラスト、星と少年の会話の台詞には鳥肌が立ったね。

もっとも、柴さんの描く「日常」や「家族」が、あまりに昭和的・高度成長期的なのは、すでに複数の人たちが指摘するように、私も気になる。両親+子ども2人の核家族、お父さんは外で働きお母さんは家を守る。お父さんは明かりのついた「団地の我が家」を目指して帰ってくる。一体いつの話?という感じがするし、これが「普遍的な物語」と言われてしまえば「?」。だけど、それでもなお、ある種の懐かしさをもって観てしまうのは、高度成長期的「近代家族」がいかに強烈な「安定」イメージを私たちに植え付けたかを物語っているのかもしれません。

それから、星+星に住む一つの家族+その星を遠くから見つめている少年、という三者の視点が微妙にずれ重なることで、スケールが自在に行き来して物語に立体感と浮遊感を与えている。こういう「演劇」にしかできないことをさりげなくやってくれると、痺れます。

ラップを使ったミュージカルという目新しさだけでなく、客席も使った円形劇場の近接感、「青年団」的な演技とせりふ回し、リピートを多用する演出、センスの良い音や照明も楽しめます。激しくオススメ。


(3)「コーラスライン」―すべての夢追い人のためのバイブル。
2011年8月4日14時開演@赤坂アクトシアター。1970年代に大ヒットした、知らない人はいない有名作品。いやー、なめてました。古典恐るべし。ラストのWhat I did for loveでボロボロ泣かされました。

私もショービジネスではないけど一応「夢追い系」の仕事なんで、夢に向かって頑張ってる人たちの話には共感しやすいというのはありますが、何と言ってもこの作品の素晴らしさは、夢に向かってどんなに頑張っても、すべての人が報われるわけではない、ということをきちんと示していること。

落ち目になった女優のエピソードも含め、誰しも幼少期や思春期のプロセスを経て今があり、夢が終わろうと続こうと、人生を生きていかなくてはなりません。夢追い系作品の多くは、夢がかなった!破れた!というエンディングでリセットですが、実際の人生って、夢がかなっても終わっても、続いていくものなんですよね。その覚悟まで含めてのダンサーを描いたからこそ、幅広いファンを獲得する深みを持った作品になったのではないかと思うわけです。

この作品は、だから、30歳すぎてから観ると、より楽しめるのではないか。だって、その年以上になってこそ、「何かをあきらめる、それでも人生は続いていく」「夢はかなったけど思っていたのとは違った、それでも人生は続いていく」という実感があると思うので。人生の折りにふれ観かえしたい作品。これぞ名作ですね。

それから、やはりモノローグの演出や鏡の使い方が面白い。既視感があったのは、私が観てきたその後の作品にあまりに強く影響を与えているからなのだろうな、と。鏡やモノローグの使い方の歴史を勉強したい。

あと、群像劇は表現のバラエティが広げられるミュージカルの方が向いているかも、と思いました。群像劇好きなんだけど、ストレートプレイだと90分くらいで飽きる。


以上。やはり3作品まとめ書きは無理があるな・・・。そしてミュージカルは知識がなさ過ぎるのと作り方が違うので、やっぱりあまり語れないね。文献読んで10作品以上観ないと何も言えないっていう感覚。