安部公房×岡田利規『友達』

2008-11-20

演劇界の気鋭 岡田利規が,安部公房の戯曲を上演するとあっては,
観に行かないわけにはいきません.
実は岡田利規の生舞台を観るのはコレが初めて.
『3月の5日間』のDVDは観たんですけどね.

演劇の表現様式を解体しようとするアバンギャルドな試みは,
しばしば作品からエンターテイメント性を失わせて,
コアなファンでなければついていけなくなる場合も多い.
でも,岡田利規という人は,そういう意味ではすごく才能がある人だなと思った.
正直,面白かったです.
特に前半,岡田利規のシュールな演出,安部公房の不条理な世界観とマッチしてて.
あんまり感情的な演技をさせない演出なので,かえって怖さが増した.

あと,音楽とか照明の使い方がオサレで刺激的.
客入れ時の音楽と照明は人工的だけど感傷的な雰囲気.
婚約者とベンチのシーン,セピアとカラー(赤)が対照的に使われる照明演出は美しかった.
あのシーンは,舞台構成,身体表現ふくめ圧巻だったな.
微妙に上手側に傾いた舞台上で,ベンチに座った女の体が,
気づかないぐらいのゆっくりしたスピードで下手側に傾いていって,
最初は「目の錯覚?」と思うんだけど,気づけば空間自体が大きく傾いたように見えている.
あの女優さん,表情を変えず他は微動だにせず体を傾けていく練習,大変だったんじゃないだろうか.

(今の)演劇の表現様式を解体する,という試みの先に,
演劇でしかできない表現が構築されているのがとても面白かった.

ただ,後半は集中力を持たせるのが少し辛い.
ま,原作の戯曲の問題もあるんですが.
中盤以降,ラストが予想できちゃうっていうところもあり.

あと,やっぱり若松武史の演技が苦手なんだよなー.
時々,自己流なギャグ?みたいな台詞回しを挿入してくるのがウザいというか.

以下,演劇情報サイト・ステージウェブより転載.

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ユニークな身体表現と現代の口語会話を組み合わせた舞台で注目を集めるチェルフィッチュ。主宰の岡田利規は05年に『三月の5日間』で岸田戯曲賞を受賞、さらに小説などの執筆も行い、今年4月には大江健三郎賞も受賞、今もっとも注目される演劇人だ。その岡田が、初めて既成の戯曲を演出する。

 11月12日からシアタートラムで上演される『友達』は、1967年に安部公房が発表した戯曲で、青年座紀伊國屋ホールで初演した(演出・成瀬昌彦)。平凡な男の部屋に闖入してきた、優しい笑みを浮かべる9人の"家族"。善意に満ちた笑顔で隣人愛を唱える彼らの真意は何か、誰にも分からない。物語は不条理な笑いの中から、他者との関係性を暴き出し、現代社会の人間関係を照射している。
 今回の上演では、チェルフィッチュ岡田利規が初めて既成の戯曲を演出するほかに、自身のカンパニー以外の俳優たちと芝居作りをする点も話題の一つ。元ベジャール・バレエ団のプリンシパルであった小林十市、「大駱駝艦」を主宰する暗黒舞踏麿赤児天井桟敷で中心的な存在だった若松武史、80年代の小劇場ブームを牽引した青い鳥の旗揚げメンバーである木野花文学座の俊英今井朋彦など、さまざまな舞台経験をもつ実力派俳優たちが、果たして岡田の演出の下で、どのような演技を見せてくれるのかも注目されている。
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