劇団、本谷有希子「偏路」
2008-01-16
12月から1月にかけて,3本の演劇を観ました.「偏路」はその1本目.
時間がたち過ぎて,感想を忘れかけてきました.
東京で役者を夢見た主人公(若月)が,夢破れて北陸の実家に戻ろうとするが,
善良な田舎の親戚の気持ち悪さとか,父親の変人ぶりとか,
夢をあきらめたいのにあきらめきれなくてあーだこーだとか,
そんなものにかき回されながら,少しずつ前進しようとする物語.
ちなみに「偏路」は誤字ではなくて,ストーリー内の「お遍路」とかけてあります.
いやぁ.面白かった.
ほのぼの家族を見て「テレビで観た世界が,実在していた!」と衝撃を受けたり,
田舎のなんともいえないほのぼの感とあきらめ感を嫌悪してバカにしたり,
バカにすると同時に,「そういう自分は東京にしがみついてるだけじゃねーか,
たいした才能もないくせに」と自己嫌悪に陥ったり,
ドロドロな人間関係のほうが深くて,お人よしやプラス思考を「浅い」と決めつけるとか,
私自身,若月に共感するところがものっすごく多くて身につまされたというか,
「あるあるー」「そういうの,あったあったー」と笑ってしまった.
もちろん,無意味にドロドロとか無意味にウジウジとかやってるのも「浅く」て,
(というか,単純に頭が悪いと思う)
「一回りしてプラス思考」が一番「深く」て賢いと,今は思いますが.
最後,「田舎に住む!がんばって夢をあきらめる!」と宣言し,
親戚宅でうまくいきそうになるんだけど,
最後には「やっぱ夢あきらめるなんて無理ー!!」と,元の黙阿弥に.
ラストシーンの若月と父親が二人きりで炬燵に入るシーンでは,
若月が「でも,やっぱり(夢を)あきらめたい・・・」と言うと,
父親が「いいんよ,あきらめることをあきらめずにいれば,いつかあきらめられるよ」と言う.
それが非常に良くて,涙が出た.
そうなんだよなー,あきらめることをあきらめずにいれば,
いつかはあきらめられるから頑張ろうってことなんだよ.
大人になると,本当に本当にどうしようもなくて,
あきらめなきゃいけないことが沢山あるんだけど,
それをあきらめるのが,これまた本当に本当に大変で,
「あきらめること」にすらくじけそうになるんだけど,
そこを時間かけて,じっくりあきらめ続けることが大事なんだと,
つくづく感じたのでした.
本谷有希子さんは私と同い年ということもあって,
世の中への視線に共感するところが多い,ついつい応援してしまう演劇人です.
小説も書いているけど,やっぱり舞台のほうが好き.次の舞台が楽しみです.