ナイロン100℃「犬は鎖につなぐべからず」

2007-05-31

大正〜昭和初期の作品群にもかかわらず、
センスのよい和装、舞台転換時のダンス?で軽妙に仕上がっている。
役者はみな達者で見ごたえあり。
緒川たまきの存在感と美しさに圧倒。登場した一瞬、息を呑むほど。

当時の言葉は美しく、語られる内容は普遍的。
夫婦のあきらめなど、少しステレオタイプ的な描き方もあるけど、
普段誰もが感じるような家族や身近な人への不満といとおしさ、
他人への羨望や嫉妬、社会へのルサンチマン
親や兄弟の心配の鬱陶しさとありがたさ、人付き合いの煩わしさと嬉しさ、
それら悲喜こもごもを傍から見る楽しさと哀しさがあって、笑ったりしんみりしたり。

心の中のまだ血の通っている部分を無理やり引き剥がして、
ぽっかり穴のあいた痛さがどうしようもない一日の終わり。
その穴を少しだけ忘れさせてくれた楽しい芝居でした。