夢の遊眠社(野田秀樹)「贋作・桜の森の満開の下」

2007-01-27

======
坂口安吾の同盟小説及び「夜長姫と耳男」を下敷きに、
野田秀樹が作・演出、劇団夢の遊眠社として公演。
初演:1989年、再演1992年(ビデオ化)
======

ちょっと野田秀樹ほか役者の演技が重い。
先日観た「半神」でも思ったのだけど、
夢の遊眠社のお芝居は、とてもまじめに作っている感じがします。
まぁ好感が持てるといえば好感が持てるんだけど、
ビデオだとアップで観ることができる分、ちょっと疲れてしまいます。
なんか、がんばって演技してるなー、みたいなところが。
まぁ装置や衣装が派手な分、演技も大きくしないと負けちゃうんでしょうけど。
このビデオ、アップが多すぎるんだよなー。

当時の野田秀樹のお芝居としては、まぁまぁ分かりやすい方らしいです。
それでも私にはちょっと難しかったのは、多分こちら側の責任。
日本史の知識がほとんどなく、
大海人皇子とか天智天皇あたりの謀反話の意味がわからないので、
あまり脚本の意味が分からなかったんです。

もちろん、それでも大体のストーリーは分かるんだけど、
細部にちりばめられた伏線らしきもの、テーマらしきものに意味づけができず、
観終わったあと、「何かすっきりしないな・・・」という感想を持ちました。
インターネットで色々調べていたら、あるブログで、
「演出力の野田秀樹、脚本力の鴻上尚史」というようなことが書いてあって納得。
(正しくは、「野田秀樹はその脚本の質よりも演出力が圧倒的に高いと思うし、あれだけ舞台を広く使いきれる演出家はいないと思うのだが、鴻上さんはその意味では演出家としてより戯曲家としての能力が数段優れている」)

STUDIO VOICEの80年代特集によれば、
80年代演劇は「意味の呪縛」から逃れたかったらしいから、
物語性や伏線・テーマの一貫性を求めるほうが間違ってるのかもしれません。
しかし、いかにテーマが意味不明でも、成立させて感動させてしまう手腕こそ、
野田秀樹が「演劇の天才」と呼ばれるゆえんなのでしょう。

この作品で、一番私が押したいのは、「夜長姫」を演じた鞠屋友子の演技。
無邪気で無垢で残酷で狂気的な笑顔とその笑い声は、鳥肌モノ。
こんな女優がいたのか、と、びっくりしました。
美人ぶりも際立ってたので調べてみたら、元宝塚の娘役だった方。
どうりで歌声も美しく、滑舌もちゃんとしてるわけです。
とにかくこの方の芸を観るだけでも、十分にモトがとれますよ。
あと、野田秀樹のラストの台詞、「あー、まいった、・・・まいった」も巧かった。
入魂の台詞でしたね。

前述のとおり、私は日本史の知識がほとんどない上、
和風の衣装やセットがたいして好きじゃないので、
そこまで心を奪われませんでした。星2つ。
評価 ★★☆☆☆