【備忘録】劇団ロロ「LOVE02」@京都

【備忘録】劇団ロロ「LOVE02」@京都 2012年10月
「父母姉僕弟君」があまりに衝撃的だったので、劇団ロロ(というか三浦直之)がほぼ一貫して描き続けてきたテーマ「ボーイ・ミーツ・ガール」の集大成といわれている「LOVE02」の再演を観に。「父母〜」が従来のロロ作品から飛躍した云々という劇評を読んだことがあったのだけど、私にとって「父母〜」がロロ作品初体験だったので、ロロの代表作的なものを観たくて。

結果、大変に完成度の高い作品で、前売り2500円、当日でも2800円というのは大変に安いなと。「新しいものを観た」という後味が強い作風なので、演劇好きな方にはぜひおすすめしたい。

ストーリーはきわめて単純で、登場人物たちがだれかに出会って恋をしてそれが叶ったり叶わなかったり壊れたり修復したりする様子を抽象度高くSF的に描きながら「LOVE」の美しさとせつなさを表現、という感じの作品です。「父母〜」では前半のナンセンス強すぎの展開にポカーンとなってしまう人も(私ですが)、こちらは割と観客フレンドリーなエンターテイメント風味で安心感あり。登場人物たちの衣装はすべて白で統一され、装置は抽象、ライティングもロマンティックでセンチメンタル。途中で挿入されるモーニング娘Perfumeサザンオールスターズはポップな印象。このへんの組み合わせには、センスの良さを感じずにはいられませんでしたね。

とはいえ、テーマである「ボーイ・ミーツ・ガール」は、30歳すぎてしまった私には少々遠いテーマでもあり、涙を誘うクライマックスでもあまり泣けず。恋のテーマであまり泣けないってのもオバサン化のようで寂しくもあるのですが・・・。まぁ、恋に限らず出会いの嬉しさと別れの寂しさというのはあるし、男女に限らず人間関係のままならなさというのは30すぎてこそひしひしと感じるということもあるのですがね。どうにも、「アラいいわねー、若い人は」的な感覚になってしまう。それでも、物語としては面白いし感動もできるし、演出方法は見どころ満載なのでおススメですけれどね。

比べればやはり、「父母〜」はそれまでの「ボーイ・ミーツ・ガール」的なテーマから、ひとつ普遍性を上げた作品だったのだなと、それを確認できたことはよかった。

しかし、ままごとにせよロロにせよ、この「新しいものを観た!」感はなんなのだろうと思ってしまいます。従来の演劇と明らかに違う、違うのに言語化できないもどかしさ。で、色々検索してたら「ポストゼロ年代演劇」で評論があって、ロロの前に「新しいものを観た」と思った「ままごと」の柴さんもこれに分類されている。

演劇コラムニストの中西理氏の「ポストゼロ年代演劇」↓
「演劇の新潮流2 ポストゼロ年代へ向けて 第2回 ロロ=三浦直之」WEB講義 - 中西理の下北沢通信(旧・大阪日記)

正直、ポストモダン論に不勉強なのでようわからんのと、ここに挙げられている劇団・劇作を「ポストゼロ年代」なる特徴でひとくくりにできるんだろうかという疑問もあるけれども、新しい潮流があるというのは確かなことのよう。
物語構造もさることながら、ロロにせよままごとにせよ、音楽の使い方/とらえ方が印象的で、ミュージカルとの境界が薄いという感じがする。上の評論では「感動させることを厭わない」とあるけれど、従来の現代演劇では「ベタ」と一蹴されてしまうような表現や演出でも、抵抗なくそれを取り入れていく(もちろん新しい技術を上手に使いながら)のが印象的。
それから、ままごとは役者・セリフの配置と動かし方がとてもユニークなのだけど、ロロの場合は光の使い方が圧巻です。おそらく技術的な進歩というのもあるのだろうけれど、照明演出技術の格差が拡大しているように思える。
そういう個別具体的な音楽・照明・装置の演出方法に関する評論が読んでみたいのだけど、どこかないのかしらん。

ナイロン100℃ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏も注目しているロロ。ケラ氏のtwitterでは、「ロロ「父母姉僕弟君」。おそらく多くの観客とは違う意味で泣けた。ざっくり言うと面白かったし、俺たちが20代半ばの頃に作っていた舞台と比べると五倍はしっかりしていた。それでも作演の三浦くんには色々と言いたいことがある。向こう5年ぐらいが勝負だと思う。観てよかった。」と言わしめる若い才能。今後も注目していきたいものです。


以下、オフィシャルサイトより。

ロロ 京都→仙台ツアー公演
KYOTO EXPERIMENT 2012 フリンジ "PLAYdom↗"参加
『LOVE02』
『LOVE02』は誰かの想いがほんのちょっとだけ別の誰かに届いて、その別の誰かの想いが、そのまた別の誰かにほんのちょっとだけ届いて、 そうやって想いが波及してゆっくり広がっていく景色を夢みながらつくりました。
この作品がもっとずーっと遠くまで波及していくように、そんな景色を夢みながら乗り込みますっ。
正夢にしますっ。
三浦直之
脚本・演出
三浦直之
出演
板橋駿谷 亀島一徳 篠崎大悟 望月綾乃 森本華(以上ロロ)
金丸慎太郎(贅沢な妥協策) 北川麗(中野成樹+フランケンズ) 小橋れな
島田桃子 高木健(タイタニックゴジラ)
スタッフ
照明/工藤雅弘(Fantasista?ish.)
照明オペ/菅原和恵
音響/池田野歩
音響オペ/角田里枝
美術/松本謙一郎
衣裳/藤谷香子(快快)
舞台監督/鳥養友美
演出助手/中村未希
宣伝美術/玉利樹貴
仙台公演制作協力/森忠治
制作助手/横井貴子
制作/坂本もも